2009年11月11日

Twelve Y.O.

福井晴敏「Twelve Y.O.」を読了しました。福井さんの本を読んだのはこれが初めて。作品に触れた、という意味では以前観た映画「ローレライ」があります。



とりあえず読み終えた直後の大沢在昌さんの解説がまったく解説になっていないことよりも、その中の以下の一説に思わず笑ってしまった。ちなみに文中に出てくる「川の深さは」はこの作品が賞を獲る前年に、同じ賞の選考で落とされた作品。
本作品には「川の深さは」を踏まえたストーリー展開があり、ひとつの独立した作品としては、その点が不親切(中略)福井氏も、まだ活字になっていない前作を踏まえるという、してはならぬことを(後略)
すげえ。どんだけ自分の作品を愛しているんだ、この作者は。

というわけで無事読み終えました。次々と明らかになる謎また謎、先は気になる、どんどん読み進めてしまう、という小説だった……んだけど、なぜか「面白かった」「楽しかった」「読んで良かった」って気がイマイチしない不思議。変な表現だとは分かってるんだけど……なんか騙されてるような気がして。

いや、もちろんフィクションなんだけど、そういうんじゃなくて、なんていうか「いや、こうはならんだろう」という冷めた見方が消せない。実際に各国の諜報部員がこんな形で1人の男を捕まえられなかったり、訓練された少女1人に海兵隊員たちが手もなくひねられたり……こっちとしては「騙されたくて」読んでるんだけど、さすがに自分を騙しきれないほどに現実味がなさすぎて「騙されていることに気付いて」しまう、というか。

でも「人形と呼ばれるまでに兵器として育てられた少女がたまにほろりと人間味を垣間見せる」とか「CIAやNSA、それに一般には知らされていない自衛隊の裏の組織が結託」とか、聞いてるだけで恥ずかしくなりそうな「カッコいいだろ」的設定群をしっかりがっちりとまとめあげて「本当にカッコいい」小説にしてしまっているのは、本気ですごいと思った。

あと、風景や状況の例えや描写がいちいち独特で妙な方向に尖っていて、読んでて楽しかった。特に国際関係を説明するくだり。具体的にどこ、って上手く言えないけど。

なんか上手く表現できないけど「面白かったは面白かったと言えなくはないけど人に薦める箇所がない」作品でした。ストーリーが超面白かったというわけでもなく、最後に大どんでん返しがあったわけでもなく(ウルマの反逆は事前に古武さんが示唆してたし)、これといって共感できた登場人物もなく(平さんも一己の人格を持った独特の思想の持ち主で素直に共感するってわけにもいかず)……うーん。

嫌な表現かもしれないけど俺の「萌え」に訴えるものがなかったのかな。多分。とりあえず福井さん作品への評価は、評判の良い「亡国のイージス」でも読んでからにしようかなあ。
posted by ギア at 06:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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